本ウェブサイトは、アクティブラーニングや学習パラダイム、トランジションなどに関する私の考えについて、理論的・実践的にまとめるものです。政府や特定の大学、学術団体等を代表して掲載されるものではありません(ただし、政府や論者の論考や説明に対する私の考えはまとめています。詳しくは目次を見てください)
以下、本ウェブサイトを構築するに至った経緯です。
はじめ(2006~2010年頃)は、高等教育改革のなかで始められた草の根運動的なアクティブラーニング論でした。2012年に『質的転換答申』(注1)が出され、「アクティブ・ラーニング」が政府による高等教育施策の一つとなっても、状況はそんなに変わるものではありませんでした。
ところが、 2014年11月に前文科大臣から中教審へ諮問が出され、「アクティブ・ラーニング」が初等中等教育にまで下り、次期学習指導要領の目玉の一つとなって以降、アクティブラーニング論は単なる学者や関係者の草の根運動ではすまなくなりました。教育改革の現代的・社会的意義や先に見据えるものをまったく理解しないで、「グループワークやプレゼンテーションをやればいいんでしょう」みたいな実践や議論がごまんと出てきて、教育現場が大きく混乱し始めたからです。無知で浅い理解の者が多くて困るというだけなら話は愚痴で終わりますが、これでアクティブラーニング論が持っていた意義や発展可能性まで疑問視される風潮が出てきて、私としてはこの問題にどういう立場で臨むかということを考えさせられるようになりました。また、2016年12月に出された初等中等教育の学習指導要領改訂に向けた答申(注2)のなかで、アクティブ・ラーニングは授業を改善していくための視点-「主体的・対話的で深い学び」とされ、これまでの学術的な説明とは異なるものとなりました。私は十分妥当な説明になったと賛成していますが、しかし、学者として自分が考えているものとの相違は示さなければなりません(関心のある者はここ)。これを示さなければ、先の「グループワークやプレゼンテーションをやればいいんでしょう」の人たちと同じになってしまいます。アクティブラーニングだけが問題ではありません。その前提となる学習パラダイムや先に見る学校から仕事・社会へのトランジションなど、教育改革の基礎となる理論的な体系性、拡がりについても同様に問題としなければなりません。それら全体を絶えず見直す、必要であれば修正をするという作業が必要です。
私は、学者として何を考え、先に何を見るかという考えを出し、世に問い、そのなかで政府や他の論者の論考や説明に目を向け相違を明らかにしていく、という立場をしっかり採りたいと思いました。修正と展開がとてもはやいテーマになりましたし、もっと授業実践についてもコメントをしたいという思いもあり、伝達性の高いウェブサイトで最新版を提示することにしました。これが、「溝上慎一の教育論」のウェブサイトの目的です。
(注1)中央教育審議会『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて-生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ-(答申)』(2012年8月28日)
(注2)中央教育審議会『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)』(2016年12月21日)
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